大型研究施設/ソフト・データ 物質科学シミュレーションのアプリ開発と普及

現在、研究を進める上では、日本中のさまざまなスーパーコンピュータを利用しながら進めることが必要な状況になっています。そのような環境を実現するのが、HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)という基盤システムです。これは「京」コンピュータと、全国の大学・研究機関に設置されたスーパーコンピュータをネットワークで結び、ユーザーの多様なニーズにこたえるための革新的な共用計算環境を実現するものです。
そのような状況の中で、アプリ開発はここ10年で大きく様変わりしました。計算機が速くなり、大規模、長時間、あるいは近似精度の高い計算が可能になってきました。それによりシミュレーションの守備範囲が拡大しました。一方で、高度なプログラミング技術が要求されるようになり、アプリ開発がチーム化され、あるいはプロジェクトが大型化してきました。
アプリ開発の大規模なプロジェクトとしては「京」やポスト「京」コンピュータがあります。 私は、ポスト「京」のデバイスと材料に関するグループの代表を務めています。そこでは例えば量子デバイスシミュレータのアプリ開発や、さまざまな材料の物性値を計算できる手法の開発などが行われています。
物質科学の分野も含め、世界的にアプリの無償公開や商用化が進みました。公開されているアプリに新機能を追加することできるようになっており、アプリの公開は手法開発に携わる研究者にも恩恵をもたらしています。
アプリ開発がチーム化され、プロジェクトが大型化する中で、アプリの公開や普及が重要になってきています。そのための方法として、われわれは計算物質科学のポータルサイトMateriAppsをつくりました。現在は200以上のアプリが紹介されています。MateriAppsLIVE!という環境も提供しています。これはUSBメモリに複数のアプリが入っており、ノートPCなどで手軽に利用できるようにしたものです。

物質科学シミュレーションのポータルサイトMateriAppsのトップペーシ

常行 真司

東京大学大学院理学系研究科
東京大学物性研究所