ナノテク展2020出展レポート

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>は2020年1月29日(水)から1月31日(金)に東京ビッグサイトにて開催されたnano tech 2020にブース出展し、プロジェクトの概要と4研究拠点における代表的な成果を紹介しました。

出展レポート

磁性材料研究拠点(ESICMM)

ESICMMでは、「永久磁石の産業応用へ向けた新展開」として、「放射光を用いた磁性材料内磁化分布の三次元観察」「機械学習による磁石材料化学組成の最適化」「熱間押し出し加工による高耐熱性ナノ結晶バルク磁石の試作」を1枚のパネルにまとめ、展示いたしました。また、磁石材料の実物も展示いたしました。

展示した磁石に興味を示す来客が多く、準備したパンフレットの配布も良好でした。現在、世界最強磁石であるNdFeB系と、次世代磁石として開発しているSmFeCoTi系を展示しましたが、NdFeB系の方に興味を持つ来訪者が多い印象でした。また、パネルで紹介した、近年流行の情報工学を利用した新材料の理論探索について、多くの質問を受けました。ナノテク展の性格上、磁石研究には詳しくない客層が多かったので、今回のような現物磁石の展示や、一般の方の興味を引く写真を活用した技術紹介は、広報活動の観点で功を奏しました。

電子材料研究拠点(TIES)

TIESでは、「新しい材料設計に基づく新機能高性能電子材料と水素」と題したパネルを展示しました。配布した「元素戦略研究センター」のパンフレットも多くのお客様にお持ち帰りいただきました。時間をかけて説明を差し上げ、議論していただいた来訪者は1日あたり15人程度でした。

今回は出展エリアが企業展示から隔離された奥にあったためか、ついでにフラリと立ち寄る元素戦略そのものを全くご存じない方は半分以下でした。一方、半導体、誘電体、マテリアルインフォマティクス、水素等の成果に関してピンポイントで関心があるお客様が多く、質問がかなり専門的な場合は説明員が対応しきれないこともありました。産業界のお客様は5割程度でした。

ピンポイントのトピックスとしては、[1] フラットパネルディスプレイ発光素子用の高性能新電子材料、[2] M.I.や分子軌道法等の新しい材料設計コンセプトによる新材料探索、[3] 両極性半導体新材料、[4] 物質中の水素と超高感度水素濃度測定、に高い関心が集まりました。

触媒・電池材料研究拠点(ESICB)

ESICBでは、触媒分野で「貴金属フリー自動車三元触媒~タンデム型触媒システム」と「貴金属フリー三元触媒によるCO-NO反応のメカニズム解析」、電池分野で「電解液に秘められていた数々の超機能」と「世界最高の導電率を示すナトリウムイオン伝導性硫化物固体電解質」の四つの最新トピックスを一つのパネルにまとめて展示しました。電解液の超機能の一つとして、今年も火に電解液をかけると消えてしまう映像を流し、来客の目を引きました。元素戦略プロジェクト全体の紹介パンフレットに合わせて、拠点のパンフレット、3月に開催する拠点行事の案内を約300部以上配布できました。

今回も、専門分野の研究者や学生、専門ではないが関係する業界の方々など数多くの方に来訪していただき、当拠点プロジェクトの成果を説明させていただきました。今回、準備した毎年発行している拠点のアニュアルレポートの最新版も、関連分野の来客に喜ばれ、用意した部数すべてを配布しました。当拠点発の新しい学理・新しい技術を国内外の産業界へ発信する良い機会となりました。

構造材料拠点(ESISM)

安心・安全社会を支える構造材料は、強度と延性を具備することが不可欠です。六方晶金属では、その結晶構造に起因する延性の乏しさの克服が課題となっています。ESISMでは、「高強度と高延性を具備するバルクナノ六方晶金属材料」のパネルを展示し、マグネシウム合金を例に、当研究拠点が提唱している新しい変形子概念、および、その応用による高強度と高延性の両立の実証例、さらに、今後の研究展開や応用分野を紹介しました。

金属材料を扱われる企業の技術者・研究者の方々が特に興味を持ち、熱心に解説を聞いてくださったと感じます。他にもさまざまな立場やバックグラウンドの方々に足を止めていただくことができました。中には、「今の大学ではどのような最新研究が行われているのだろう」、という興味でお越しくださるOBの方もいらっしゃいました。普段の拠点からの情報発信だけではなかなか届かない層に拠点や元素戦略プロジェクト全体の活動をアピールできるのは、ナノテク展という大規模な展示会に出展することのメリットであると思います。

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の紹介

今回は、コロナウイルスの影響と、ブース設置場所が企業関連ブースと離れていたこともあり、昨年並みに来場していただけるか心配でした。開始してみると、インパクトのある元素戦略プロジェクトのメインパネルが通路からよく見える見通しのよいブースレイアウトであったことも功を奏し、多くの方に来場いただきました。最終日の14時頃には、用意した600部の展示会用パンフレットが全て配布済となり、過去の研究ダイジェストやその他チラシもほぼ全て配布することができました。結果として、ナノテク展の宣伝効果は、とても大きいことが今年度も実証されました。

メインパネルを訪れたお客様の中で、アジアやヨーロッパの国々で大型研究プロジェクトのマネジメントに携わっていらっしゃる方たちが興味を示してくださったことが印象的でした。元素戦略プロジェクトの全体像についてご説明したところ、プロジェクトの運営体制や拠点間の連携について質問を受け、とても興味を持たれていることが伺えました。また、横浜にある「はまぎんこども宇宙科学館」関係者の方に「元素戦略」の物質科学の基本的な取り組みに興味を持っていただき、「小中学生に対して物質科学研究の重要性を伝えるコンテンツとしてコラボレーションできないか」というお話もいただきました。「元素戦略プロジェクト」コンテンツの国際的、一般社会的なアピールの重要性を感じました。

nano tech 2020について

www.nanotechexpo.jp/main/
プロジェクト概要/各拠点シート(日英併記)
各拠点パネル