元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>/大型研究施設 連携シンポジウム(第3回) ─新学理が牽引する物質・材料機能発現メカニズムの理解と産業応用
開催趣旨

文部科学省元素戦略プロジェクト設置の背景は、2007年の文部科学省元素戦略検討委員会報告書に記された、「物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し、利用する観点から材料の創成につながる研究」でした。その後、2010年に希少金属が逼迫する問題が起こり、その緊急性を踏まえて2012年1月6日にナノテクノロジー・材料科学技術委員会において、それまでのJSTによる個別研究に加え、物質材料研究そのものに革新をもたらし飛躍させるべく、元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の活動が決定されました。
そこで打ち出されたビジョンは、「材料科学、金属学、物理学、化学、先進機器解析等を結集し、従来の学問体系を超えて研究を大きく展開し、さらにその場で人材育成を行う」と、「産業界の視点を取り入れ、イノベーションの創出に直結する高い達成目標設定、分野融合による基礎科学の領域拡大、学問的課題解決を目指す」というもので、物質・材料基礎科学が社会性をもつ、ないしはその意識をもつ必要があるという指摘でありました。これは、かねてから当該アカデミアがもつ課題を克服する道筋の提示であり、本プログラム導入の際の文科省関係者の方々のご尽力に、あらためて謝意を表します。
元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の英語名はElement Strategy Initiative:To Form Core Research Centersです。これは個別の研究テーマの集まりではなく、研究拠点の形成が、日本にとって必要であることを意識したものです。具体的には、磁性材料、電子材料、触媒・電池材料、構造材料の4拠点がそれぞれに解析評価、電子論、材料創製の研究グループをもち、たがいに連携して社会のニーズを認識したうえでの学理の追究をおこなってまいりました。
拠点の活動を強力に推し進める際に重要な役割を果たしたのは、わが国が誇る最先端の大型研究施設との連携でした。さらに、プロジェクトの各拠点と大型研究施設の間の連携を、分子科学研究所(分子研)、東北大学金属材料研究所(金研)、東京大学物性研究所(物性研)等の基礎研究機関が支えるという盤石な体制がつくられました。
一方、プロジェクトの進捗に伴って、外部の研究プロジェクトと協同して研究する機会も多くなり、元素戦略プロジェクトの体制はそれらを包みこむように拡大しつつあります。本シンポジウムでもこれが反映され、元素戦略プロジェクトに限らず、関連する多彩な研究が紹介されます。
元素戦略プロジェクトのような研究活動は世界でもあまり例がありません。今後は世界に向けて発信し、次回の第4回は国際シンポジウムとして海外からも多くの聴衆をお招きし、活動の輪を広げたいと考えておりますので、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

*本シンポジウムのホームページでは、プログラム委員による座談会「元素戦略のこれから」を掲載しています。合わせてご覧いただきたいと思います。

プログラムの作成にご協力いただいたプログラム委員の先生方に、誌面を借りてお礼申し上げます。

プログラム委員

雨宮 慶幸 東京大学
入山 恭彦 大同特殊鋼(株)
魚崎 浩平 物質・材料研究機構
潮田 浩作 日鉄住金総研(株)
川合 眞紀 分子科学研究所
杉山  純 (株)豊田中央研究所
瀬戸山 亨 三菱ケミカル(株)
高尾 正敏 元大阪大学/パナソニック(株)
高梨 弘毅 東北大学金属材料研究所
常行 真司 東京大学
寺倉 清之 物質・材料研究機構
林  眞琴 総合科学研究機構
細野 秀雄 東京工業大学
福山 秀敏 東京理科大学

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>と連携体制

連携シンポジウムの役割
元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>・大型研究施設連携シンポジウムは、「学理の追究を通して」物質材料科学にかかわる研究者・研究機関および産業界の間の連携・協力を促進するポンプの役割を果たしている。

福山 秀敏

元素戦略プロジェクトプログラム運営委員会専門委員(東京理科大学)