元素戦略プロジェクトがnano tech 2019に初出展

元素戦略プロジェクトがnano tech 2019に初出展

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>は2019年1月30日(水)から2月1日(金)に東京ビッグサイトにて開催されたnano tech 2019にブース初出展し、プロジェクトの概要と4研究拠点における代表的な成果を紹介しました。

出展レポート

磁性材料研究拠点(ESICMM)

ESICMMでは、「希少元素に頼らない永久磁石の開発」の1枚のパネルを展示しました。併せて展示した、3Dプリンタで作成した透明樹脂中の希土類磁石の結晶構造と、磁性に関与する電子分布の模型は、多くの来客を引き付けるのにとても効果的でした。磁石の基本原理と、第一原理計算データを活用した最適物質探索の結果を紹介しました。

来訪者からの質問として、磁石性能を決める要素計算機を用いた材料デザイン手法の可能性の質問を受け、自分たちで計算してみたいという声が聞かれました。また、組織構造や界面での複雑な構造と磁石材料の特性が計算できるのか、重希土類フリー永久磁石の実現性可否等の本質に迫る質問も多くいただきました。さらに、セミナー実施依頼、電子天秤用小型高性能磁石の開発ニーズの話もお聞かせいただきました。

電子材料研究拠点(TIES)

TIESでは、「水素の役割・機能・状態の解明と高感度定量」「新しい材料設計指針と新機能高性能電子材料」の2枚のパネルを展示しました。配布した成果集は重量があるにも関わらず140冊ほどお持ち帰りいただきました。時間をかけて説明を差し上げ、議論していただいた来訪者は1日あたり20~30人程度でした。

来訪者の内訳は、(1)ピンポイントで研究成果に関心がある、(2)M.I.等による材料探索に関心がある、(3)当該分野に関わっている/関わっていた、(4)企業としてニーズを訴えたい、(5)拠点や大学の関係者、に大きく分類され、自動車業界も含めた産業界の方は7割程度でした。

注目トピックスとしては、とくに[1]超高感度水素濃度測定、[2]物質中に存在する水素負イオン、[3]M.I.や分子軌道法等の新しい材料設計コンセプトによる新材料探索、[4]フラットパネルディスプレイ用の高性能新電子材料、[5]エレクトライドの触媒応用、に高い関心が集まりました。

触媒・電池材料研究拠点(ESICB)

ESICBでは、「火を消してくれる安全な二次電池用電解液」「貴金属を減量した新規自動車触媒の開発」の2枚のパネルを展示しました。電池パネル横では、火に電解液をかけると消えてしまう衝撃的な映像を流し、来客の目を引きました。パンフレットは元素戦略プロジェクトと合わせて約250部配布できました。

専門分野の研究者や学生からは興味をもって専門的な視点で説明を請われましたが、非専門家で、関係する業界の方々も多く来訪し、新技術として受け止めてもらえました。例えば、リチウムイオン電池の製造設備メーカの方が今回の提案に興味をもったり、貴金属のリサイクル業者の方が今後の方向についての情報収集に来られ、新触媒の試作に関する提案をされたりしました。

また、海外からの来場者も興味をもたれ、展示会終了後にメール連絡をいただいてプロジェクトの研究者を紹介し、京都大学に直接訪問を受けるケースもありました。新しい学理を国内外の産業界へ発信する良い機会となりました。

構造材料拠点(ESISM)

ESISMでは、「高強度と高延性を具備するバルクナノ六方晶金属材料」の1枚のパネルを展示しました。チタン、およびマグネシウム合金を例に、高強度と高延性のメカニズムの説明と新しい変形子の概念を紹介しました。

材料メーカの研究部門の方で、六方晶金属材料の延性向上に取り組んだ経験のある方が来られ、専門的な議論を突っ込んで行う機会を得たことが、望外で印象的でした。また、学生が何人も来訪され、元素戦略プロジェクトの説明を行ったところ、とても興味をもっていただけました。今回のような展示会の機会を設けることは、若手研究者育成にもつながるので、重要な活動であると思います。

元素戦略<研究拠点形成型>プロジェクトの紹介

プロジェクトの概要を「地球をO Mo Te Na Si」のパネルとして展示しました。研究紹介とは異なるインパクトのあるデザインが斬新で、特に大学生等、若い方々がこのデザインに引きつけられて見学されたケースもありました。

プレゼンテーション

展示会会場の中にある「シーズ&ニーズセミナーB」コーナーにおいて、中山智弘PO(JST)による元素戦略<研究拠点形成型>の概要説明と、山田淳夫先生(東大)によるリチウムイオン電池向け消火性電解液に関する講演をおこないました。講演終了後、参加された多くの方が、セミナー会場近くに設置した元素戦略<研究拠点形成型>のブースを訪れました。

nano tech 2019について

各拠点パネル(日英併記)
各拠点シート(日本語版)
各拠点シート(英語版)