第3回 元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>/大型研究施設連携シンポジウム 開催レポート~新学理が牽引する物質・材料機能発現メカニズムの理解と産業応用~

本年2月5日(月)、6日(火)に東京大学 伊藤謝恩ホールで開催された第3回シンポジウムには、2日間で計340名が参加しました。元素戦略プロジェクトの研究トピックスに加え、外部プロジェクトで創出された成果も紹介され、多彩な出席者を反映して議論の輪が広がりました。

シンポジウム会場エントランス

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の活動の経緯と第3回連携シンポジウムの役割を説明する福山秀敏 プログラム運営委員会専門委員。

磁性材料領域の研究成果を紹介する広沢哲 研究拠点代表研究者。磁石の複層組織を制御し、物質が本来もっている究極の性能を引き出すことを目標にしている。

電子材料領域の研究成果を紹介する細野秀雄 研究拠点代表研究者。アモルファス半導体IGZOの水素不純物と特性劣化の関係を明らかにするため、ppmオーダーの感度をもつ昇温脱離ガス分析装置を開発した。

水素不純物の検出に重水素を使えるかどうかを質問する川合眞紀 プログラム委員。

触媒・電池材料領域の研究成果を紹介する田中庸裕 研究拠点代表研究者。希少元素フリーの高性能触媒の開発に取り組み、高い酸素貯蔵・放出能をもつ担体材料を見いだした。

構造材料領域の研究成果を紹介する田中功 研究拠点代表研究者。バルクナノチタンにおいて強度と延性が両立する現象を発見した。

SPring-8における物質科学の成果と産業利用について紹介する櫻井吉晴 高輝度光科学研究センター利用研究促進部門長。

コーヒブレイクは恰好の歓談の場となった。

招待講演で研究成果を紹介する大同特殊鋼㈱の日置敬子氏。重希土類元素フリーのネオジム磁石を開発し、ハイブリッド車駆動モーター搭載用磁石の量産を達成した。

ポスタープレビュー。1分間の持ち時間をフルに使うので、力が入る。39人が立て続けに発表を行った。

ポスターセッション。ポスターの分類は研究領域ではなく、「産業界の挑戦」「社会実装を目指す応用研究」「機能理解のための先端解析」「極限環境での新素材探査」「学理の追究(物質)」「学理の追究「計算・データ」という新しい分類法を取り入れた。

懇親会で挨拶する高尾正敏元大阪大学特任教授

三輪真嗣 大阪大学准教授は、SPring-8の放射光X線分光実験を行い、電圧磁気効果の機構を明らかにした。

辛埴 東京大学物性研教授は、世界最高の分解能をもつ紫外レーザー光電子顕微鏡という斬新な顕微鏡を開発。酸化物表面・界面における強磁性の可視化を実現した。

会場から質問する福山 プログラム運営委員会専門委員。ほぼすべての議題について質問し、発展の可能性を探った。

小林玄器 分子科学研究所特任准教授は、電荷担体として優れるヒドリオイオンHに着目し、新物質LSLHOを開発。より高い導電性物質を設計するための指針をつくった。

新日鐵住金㈱の高橋淳氏は、水素による鉄鋼の脆化機構を解明するため、原子レベルで可視化し、水素トラップサイトを提案した。

質疑応答にも力が入る。澁田靖 東京大学大学院工学系研究科准教授。

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の今後4年間への期待を述べ、今回のシンポジウムを締めくくる玉尾晧平サブPD。2018年度より、本PjのPDを務める