第5回 元素戦略シンポジウム 開催報告

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の第5回シンポジウムを2022年2月2日(木)、2月3日(金)に開催しました。新型コロナ蔓延により直前に完全オンラインに変更しましたが、500名を超える方々に参加いただきました。
本シンポジウムは2部構成で行われ、初日の第1部ではプロジェクトが10年間に成し遂げた成果を紹介し、2日目の第2部では、マテリアル研究DXの今後の方向を討論しました。

第1部の<基調講演>で、世界最強のネオジム磁石の開発者である佐川眞人氏からは、若手研究者に向けて「ニーズに基づく研究こそスケールが大きい。そのような研究を成功させて、自分の力で世界を変えよう」と力強いメッセージをいただきました。
<元素戦略プロジェクトの社会インパクト>では、成果を受け取る産業界側の視点で、自動車モーター用磁石、ディスプレイ材料ZSO、自動車排ガス用の新触媒、構造材料への応用に向けた取組を紹介いただきました。4研究拠点それぞれの詳しい成果は、<プロジェクト拠点のおおいなる成果>のセッションで、各拠点の代表者より説明しました。そして、大型研究施設であるSPring-8、J-PARC、「京」・「富岳」との連携による成果と産業界や学界に対するインパクトを施設関係者から紹介いただきました。

第2部は、<新たな元素戦略の取り組みと、情報科学を活用した物質・材料研究の展開>のセッションでスタート。科学技術振興機構が立ち上げた「CREST」、「さきがけ」のプロジェクトと、元素戦略プロジェクトが情報科学を活用して進めている研究を紹介いただきました。CREST研究総括の北川宏氏は「未踏探索空間とは、周期表を自在に駆け巡るような空間」、「想像の翼を常識外まで広げていくことが大切」とお伝えいただきました。また、「さきがけ」研究総括の陰山洋氏は「常識を超え、どうやって自由な発想を引き出すかが大切」と強調されました。今後、このセッションに登壇いただいたリーダーたちの活躍が期待されます。

<総合討論「マテリアル研究のこれから」:デジタルトランスフォーマーション(DX)を利用した材料開発>のセッションは有識者による基調講演、ポジショントーク、パネルディスカッションで構成され、様々な課題提起がなされました(詳細はこちら)。

総括として、玉尾晧平PDより、「元素戦略」はカーボンニュートラル戦略の主役になっていること、本Pjで多くの人材を育成し産官学をつなぐ全国的な研究者ネットワークを構築したこと、我が国の「元素戦略」の取り組みは継続的に必要であることを強調し、シンポジウムを締めくくりました。

※「東京大学伊藤国際学術研究センター内に設置したオンライン配信ステーション」