座談会「元素戦略のこれから」
元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>は、「実験・計測・計算の分野が連携して研究拠点を構築していく」という従来にない制度設計の下、2012年10月より10年間の予定で開始されました。その活動が5年経過し、その間に、ビッグデータ活用の浸透、AI技術の応用、自動車のEVシフトなど、物質材料科学研究を取り巻く社会環境は大きく変化しました。こうした状況の中で、元素戦略プロジェクトがどのような活動を行ってきたかをレビューし、プロジェクト後半ではどのような戦略を立てて学理の探究や社会的貢献を推し進めていくべきか、また産官学連携体制による物質材料研究を国家戦略としてどのように継続させていけばよいのかを議論しました。
本座談会は、2018年2月に開催する第3回元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>・大型研究施設連携シンポジウムのプログラム委員の有志の方々にご協力いただいて実施したものです。
1.元素戦略プロジェクトの5年間で生まれたもの
─分野融合が進み、研究対象がモデル系から実在系へ
福山(司会) まず、元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>は、この5年間で何をなしとげ、それはどんな意義をもっているのでしょうか。ひと言でまとめていただけますか。
川合 その前に、「元素戦略」というキーワードが大変よかったと思います。物質や材料をつくるサイエンスが、性質からだけでなく、機能からもアプローチし、人類の役に立つものにしていこうという大きな流れの研究を「元素戦略」と名づけた。みんなが納得する研究のムーブメントになりました。
高尾 私は光ディスクを研究してきましたが、学理がなくてもモノはできてくれるのです。ただ、信頼性をもってやろうと思ったら、学理、物理・化学が必要になります。元素戦略は本来そうあるべきだと思っています。
潮田 構造材料の鉄鋼は、さまざまな元素を添加することによって特性を改善しています。ですから、元素の機能を解明していくことは言うまでもないのですが、その上位概念である変形あるいは破壊がどのようにして起こるのかを追究してきました。言い換えると、元素に頼らずに組織をうまく制御して特性を出すという視点で、そこが非常に面白かったと思います。また、構造材料分野では、特に成果の社会還元に時間がかかると考えています。
杉山 元素戦略の発端となった希土類が問題になっていた磁石の特性改善の研究ではかなり成果が出てきています。一方で、新規材料の探索はまだ成果になっていないようで、これから発展していくのではないかと思っています。
常行 物理学の研究者はこれまで普遍的なものを追究していて、材料から逃げていました。その材料の中に実は非常に大事な学理があって、おもしろいのだということをわからせてもらいました。それが、材料研究に多くの理論家をつなぎとめることになっているのだと思います。
雨宮 量子ビームという計測技術では、モデル系から実在系へと発展しました。そして、ナノビームでインフォモジーニアスな系を見る、さらにコヒーレントにして結晶でないものを見ています。そこが、学理と社会還元を結びつける重要なポイントになっていると思います。
福山 社会に近いインダストリー、そしてアカデミアでも認識レベルの大きな変化があり、サイエンスが深掘りされてきているわけですね。
高梨 分野融合がある意味進んだことが大きな意義です。以前は、物理の研究者は、材料研究の泥臭いことにあまり興味はなかったという感じがあるのですが、このプロジェクトを通して磁石の保磁力であるとか、材料強度、材料破壊などに非常に興味をもたれるようになりました。
細野 私は材料研究の現場にいるのですが、このプロジェクトならではの大きな成果はまだ明確にはあがっていないと思います。まだ1+1の足し算の段階で、チームづくりや土台づくりまでができたところです。一方で、若い人たちの間では分野融合が非常に進みました。
─大型研究施設の活用化をもたらす
福山 拠点の活動を大きく支えてきたのが、放射光、中性子、スパコンなどの大型研究施設です。この狭い国に、財政的にも大変な施設があって、よくも動いていると、驚異を感じています。大型施設の役割や威力はかなり広く認知されてきましたが、もっといろいろな使いようがあるのではないかという印象をもっています。みなさんはどう考えておられますか。
潮田 構造材料の分野では、J-PARCもSPring-8も本当によく使っています。スパコンを含めて重要な施設と認識していて、研究の大きな流れになっています。
林 中性子の計測技術は、鉄鋼の強度を上げるナノ軟析出物の形成などにもっと活用していただき、成果につながればと思っています。ただ、新しい機能性材料を開発するには、計測技術だけでは十分でなく、実験技術と解析技術を合わせた3本柱が必要になります。
瀬戸山 企業の立場からすると、企業内では大型施設のような解析ができないので、大型設備を使って学理を深めていかなければいけない。活用していこうという雰囲気はできてきています。
福山 細野さんのところでは、エレクトロライドという触媒の研究もされています。放射光や中性子を使っておられるのでは。
細野 はい、いろいろなテーマでずいぶん使わせてもらっています。残念なことに、中性子は施設の故障やそれが直ったら電力の関係で運転休業と、マシンタイムがほとんどなくて、使いたくても使えない時期が少なからずありました。
大型研究施設を使えばいいというのは非常に危ない。研究の発想がしっかりしていて、出てきた結果をフィードバックできてスパイラルが上がるような使い方をしないと、装置のコストパフォーマンスが悪くて、原価償却を考えたらペイしないと思います。大型施設の稼働時間の確保(施設と行政)と、それならではの使い方(ユーザー)が課題です。
高尾 SPring-8が稼働を始めてから20年になります。最初のころはシステムを開発することで論文を書けて、何でも新しかったのですが、最近はみなさんが使えるようになってきました。そうなると、1人がおもしろいデータを出すと、みんなが同じようなデータを出すということが起こっていて、本来、常に変わっていなければいけない施設が、変化しなくなってきました。こうした状況にあっても、元素戦略プロジェクトでは、強磁場中で磁区観察ができる軟X線顕微鏡を新たに開発しました。既存の装置をそのまま使うのではなくて、装置開発をおこなった結果、新しいサイエンスが見えてきて、新しい応用も見えてきたのです。ただ、装置をつくるには何億円という費用がかかるので、その意味でも元素戦略プロジェクトは効果的なのだと思います。
2.元素戦略プロジェクトのこれから
─サイエンスこそが日本を救う
福山 では、「元素戦略」は今どんな立ち位置にいるのでしょうか。
細野 10年プロジェクトというのは意味があっての10年なのです。5年プロジェクトでは、結果が出始めたところで終わってしまう。初めの5年は、体制固めなど、いろいろなことで時間がかかります。
潮田 元素戦略の理念は、日本で誕生した世界をリードするコンセプトであり、グローバルで持続的社会の構築に貢献し、根本から支える継続すべき根源的な概念であると思います。
林 鉄鋼材料の場合、ちょっと改良するだけで5年、新しいものをつくるとなると10年はかかりますね。
細野 ですから、これからが本番です。
福山 そのときに、物質材料の開発は学理から応用へ連続的につなげていかなければいけない。そのためには何が重要となるのか。
杉山 企業の研究所の立場からすると、いま挙げられている研究テーマはあまりにも企業がやっている研究に近すぎます。企業と国の研究が並行しているのではなくて、国のプロジェクトにはもう少し先端の研究をやってもらい、それを企業が追いかけていくような形がよいと感じています。
瀬戸山 サイエンスを深めていくことと、産業応用につなげるものを切り分ける必要もあるでしょう。たとえば、100件のうち応用に向けての質の良い数件とかくらいに的を絞り、その後の戦略を考えないと、すべてが中途半端で終わってしまう。学理から応用への流れをつくることが非常に重要になります。
高尾 今の電池の学理は、実はボルタの時代と変わっていないのです。すべての電池の理解モデルは存在しない。界面、電解液といった要素は研究されていますが、システムとして見るようなものはいまだにできていません。やはりアカデミアには、そこを目指してほしいと思うのです。
今のままでは途上国にあっという間に追いつかれて電池工業はなくなってしまうかもしれない。学理で勝たなければビジネスでも勝てないと思っています。
細野 日本のマテリアルサイエンスは国際的なプレゼンスが急に落ちてきていて、今では世界5位です。産業界はまだ優位を保っていますが、このまま行くと、10年後にはかなり危うい状態になるでしょう。
ドイツがなぜ今、科学技術立国として強いのかというと、100年前のハーバー・ボッシュ法の発明があったからです。天然の活性窒素源が海外から得られなくなり、自国でアンモニアを人工合成せざるをえなくなり、国をあげて新しいサイエンスとテクノロジーをつくりあげたからです。
高梨 日本にも、かつて本多光太郎が残した非常に素晴らしい財産がありました。「金属学」です。それが基礎になって、第二次世界大戦後、金属材料は爆発的に成長したのです。
福山 ニーズがあったらすぐにできるわけではなくて、10年、50年、100年前に遡るような歴史的なバックボーンがあったわけです。
─産学のシームレスな連携がいいものをつくる
細野 このプロジェクトを通して、ユニークで本当に役に立つ材料が一つでもよいのでほしいと思うのです。コンセプトというのは後からついてくる場合が多いので、最初に役に立つ材料をつくってしまえばいいのです。
林 社会環境の変化に伴って、新しいものが求められています。アカデミアは、上流の学理を究めるところをやっていただかないといけないのですが、エンジニアリングもサイエンスとアプリケーションに両翼を広げる、またアプリケーションも製品とエンジニアリングに手を広げるようにしていかないと、本当にいいものはできないと思うのです。
そのときに、「オープンイノベーション」を実践し、産官学の連携を促進していく。そして、産業界からの「こんなことができるとうれしいのだけど」というニーズをアカデミアが受け止め、高度なニーズに対しても、アカデミアが「だったら、こんなことをやったら」と返すような、シーズとニーズのマッチングがほしいのです。
福山 アカデミアと社会、インダストリーのつながりをシームレスにする、そして、互いにマッチングが取れるようにするというのは、元素戦略プロジェクトの制度設計のいわば憲法でした。それをどう実現していくか、具体的なアクションがいま問われているわけです。
川合 出口をどうするかも考えないといけない段階に来ています。数年前までは、例えば触媒だったら、自動車の排ガス用という出口イメージがありました。ところが、自動車1台1台にそういうものを積まなくなる時代が近々来るかもしれない。そうなると、出口限定でモノを開発する必然性がなくなります。出口を想定しなければいけないものも当然あるわけで、これは企業の方にやっていただく。アカデミアは、「何になるかはともかくとして、つくるんだ」という初心に帰り、機能を出すところに重点をおいて研究していくべくではないでしょうか。
福山 出口を意識するのは大事だけど、出口をあまり意識すると時代はどんどん変わっていくから、ファンダメンタルなことが重要であろうということですね。
3.国家戦略として継続すべきこと
─研究活動を束ねる仕組みをつくる
福山 課題がいろいろ出ましたが、それを踏まえて、今後どのような活動をしていくべきかを考えてみたいと思います。
物質材料科学の研究というのは永遠に続いていきます。ですから、このプロジェクトは最初の口火であって、年限が来たら自活して新しい展開をしてくださいというのが文科省の方針です。5年プロジェクトでは年限が来ると活動が終わってしまうことが多いのですが、このプロジェクトの年限は10年ですから、その間にインダストリーを交えた仕組みをつくってほしいということです。
高尾 物質材料科学は、フィリップ・アンダーソンの言う「more is different」なのです。多様性があって、研究者のキュリオシティ・ドリブン(好奇心主導型)で進んでいく。でも、それではシステム化までいかないので、moreを少し束ねるという作業が必要になります。それには、重力波を見つけるようなビッグサイエンスではなく、スモールサイエンスとビッグサイエンスの間のサイエンス&エンジニアリングのプロジェクトをつくることです。
実際に、元素戦略はそうなっていて、分野融合が起きています。その束ね方が問われているのです。
福山 具体的には?
高尾 そこはよくわからないのですが、サイエンスから束ねる場合もあるし、アプリケーションで束ねる場合もあるでしょう。今は束ねる作業をすべて文科省がやっていますが、アカデミア側からやらなければいけない。そうしないと、アカデミアは崩壊する。これはアカデミア側からみた感想です。
福山 核心に近づいてきましたね。確かに、束ね方で研究の方向が決まります。文科省では学術審議会などでアカデミアを招集して議論しているのですが、外からは見えていない。
高尾 本来は学会がそれをやるべきなのですが、学会にはその機能がありません。
福山 研究推進体制を決める仕組みがどうなっているのか、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツについて調べたことがあります。国によってやり方は違うのですが、サイエンスボードが確立されていて、行政といっしょに議論をしていますね。
─知財戦略で産学連携を成功させる
瀬戸山 最近読んだある本の中で、引きつけられた言葉があります。イノベーションのどこに価値があるかというと、企画と研究開発までであり、製造は付け足しだというのです。つまり、すばらしい研究企画があって、技術開発も確実にできて、そこの価値をちゃんと囲い込まなければいけない。それを日本の会社がつくろうが、外国の会社がつくろうが、日本の利益に跳ね返ってくればいいのです。
このとき、サイエンスの価値を国として担保し、世界に認めさせるための仕組みが必要になります。
細野 それはものすごく重要はことで、イノベーションの担保というのは具体的には特許の問題になります。
今は、知財(知的財産権)の費用を確保できる文科省のプロジェクトはありません。例えば、J-PARCに巨大なお金を払って、電池内部を測定し、その結果を公表しています。そうすることで、日本の産業、ひいては全世界の財産にはなりますが、スペシフィックにはならない。世界共通で、かつスペシフィックでないと、ファンディングは成立しないのです。
福山 具体的な提案はありますか。
細野 実際にCRESTの中で始めたのですが、プロジェクトの中に企業の人に入ってもらい、必要な知財は書いてください、権利は50:50、儲かったらそこから引いていいですよという形にして、知財が取れるものは取ってもらうようにしました。
福山 特許書類を書ける人材が必要になりますね。文科省では、URA(リサーチアドミニストレーター)を活用しようとしています。
林 企業では特許教育をしっかりやっているので、企業をリタイアした人を特許執筆係として雇用し、研究者のアイデアをまとめてもらえば効率的です。
それだけでなく、研究者もノルマとして特許の出願書類を書くようにすることも必要でしょう。我々は年に最低2件は書かなければいけないので、必死になって考えています。論文と同じように、書いて当たり前という環境をつくるのです。
瀬戸山 さらに、特許の仕組みだけではすまない時代になってきています。ビジネスモデルまで包括する戦略を考えないと、サイエンスは浮いてしまう状況にあります。
高梨 企業はそれぞれ戦略を立てておられるが、大学にはそれがありません。産業界との連携を考えると、大学は戦略を立てられる部署をつくらなければいけない。また大学は今後、資金面でも国に頼れなくなるという深刻な問題に直面しています。本気になって自前で稼いでいくためにも知財戦略が必要になるのです。
それと並行して、オープンイノベーションの場を大学が積極的につくっていく段階にきていると思います。そのとき、企業の人がどう思うかですが、隠すのは当然とはいえ、オープンイノベーションをもう少しオープンにできる仕組みにできないものでしょうか。
瀬戸山 研究を継続していくのがいちばんですね。それで失敗を繰り返し、ここまで情報を出してもいいというぎりぎりの感覚をつかんでもらうしか方法がないと思っています。
福山 経験を積んでいくのですね。
瀬戸山 それこそ鼻の皮1枚のところまで情報を出さないと、相手の情報も取れませんよという限りなく短い距離感にするわけです。
高尾 インフラの整備も重要ですね。今のように、研究室に誰でも入ってこられるようでは、企業の人と一緒に研究できません。
福山 実際に、阪大には、フロアごとにセキュリティチェックが完備された産業用の研究棟があり、印象的でした。
潮田 もう1点加えたいのですが、産官学連携といったとき、材料のエンドユーザーと材料サプライヤーの連携があって初めて将来があると思うのです。我々材料サプライヤーは、ユーザーにずいぶん鍛えてもらっているわけです。同じようなことが、アカデミアあるいは産業界との連携においても言えるのではないかと思います。
-学会の危機感共有
細野:最後にどうしても気になるのは、日本は材料が強いと言われますが、10年から20年後にどうなるかシミュレーションしたことがあります。金属学会、セラミックス学会などは、材料系の正会員数が半分以下に、応用物理学会も3分の2くらいになります。物理学会は愛好的な人が多いからか、あまり減らない。
福山 新しい人が入ってこないという意味?
細野 主メンバーがリタイアし、企業メンバーも次々と退会してしまう。官界も減っている。このままでは、日本の製造業は成立するのだろうかという状況になります。それに伴って、学会の体制も、個人的には材料系は一つの学会で十分ではないかと言っています。細分化されている材料の学理を因数分解して統合した形にしていかないと、昔風のアカデミアではもはや次のことはできないと思います。
この問題が15年後くらいに迫っていているのです。さらに、出版界は惨憺たるもので、日本の雑誌でインパクトファクターが3を超えているものはほんのわずかで、日本は出版では最後進国の一つになっています。
川合 私も今度、化学会を担わなければいけないのですが、会員数の減少問題というのはかなり深刻で、毎年500人減っているのです。その内訳はほぼすべて企業の個人会員です。企業の個人会員が学会を支えていたのですが、それが学会から抜けていきます。
細野 そのうえ、日本の学会には外国の会員がいないのです。アメリカの学会員は半分以上が海外からです。
撮影:山本真司
座談会出席者
福山 秀敏
Hidetoshi Fukuyama
東京理科大学理学部教授
研究分野:物性理論
元素戦略Pjでは元素戦略運営統括会議構成員です。
林 眞琴
Makoto Hayashi
(一財)総合科学研究機構 中性子科学センター
研究テーマ:材料強度、構造信頼性
元素戦略Pjに先行して、J-PARC・MLFの材料構造解析装置で、Nd&Dyレス・フリー磁石材料開発のための高温水素雰囲気炉を磁石メーカーと共同で開発しました。
高梨 弘毅
Koki Takanashi
東北大学金属材料研究所 所長・教授
研究分野:磁性材料、スピントロにクス元素戦略Pjでは、金材研が元素戦略磁石材料研究拠点に参画しています。
潮田 浩作
Kohsaku Ushioda
日鉄住金総研㈱シニアアドバイザー
研究分野:鉄鋼材料、金属組織学・強度学
元素戦略Pjプログラム運営委員会専門員、JST CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」領域アドバイザーを務めています。
細野 秀雄
Hideo Hosono
東京工業大学 科学技術創成研究院教授/
元素戦略研究センター長
研究分野:電子が主役となる新しい機能材料電子材料拠点の責任者を務めています。
高尾 正敏
Masatoshi Takao
元大阪大学特任教授/パナソニック㈱
研究分野:磁性材料、固体物理学
物質材料科学と、材料をベースに展開する産業が、新たな方向を見いだしていくためのマネージメントを、10年以上お手伝いしています。
雨宮 慶幸
Yoshiyuki Amemiya
東京大学大学院新領域創成科学研究科 特任教授
研究分野:放射光科学、X線計測学、小角X線散乱
放射光研究施設を最大限に利活用するため、X線計測技術の開発に携わるとともに、ユーザーとの連携強化を支援しています。
川合 眞紀
Maki Kawai
自然科学研究機構分子科学研究所 所長
研究分野:表面科学
元素戦略Pjでは、分子研が元素戦略触媒・電池拠点の分担機関として参画しています。
杉山 純
Jun Sugiyama
㈱豊田中央研究所 分析部
量子ビーム解析研究室 主監
研究分野:ミューオン固体物理
J-PARCミューオンが元素戦略Pjに役立っていることは喜ばしいと思っています。
瀬戸山 亨
Tohru Setoyama
三菱ケミカル(株)フェロー・執行役員
研究分野:触媒、無機材料
元素戦略Pjでは、電池、触媒領域で21世紀の世界・日本に必要なことを、産業界の立場から意見を述べています。
常行 真司
Shinji Tsuneyuki
東京大学大学院理学系研究科・物性研究所教授
研究分野:物性理論、計算物質科学
磁性材料拠点PI、電子材料拠点PIとして共通基盤シミュレーション手法を開発。計算科学を介して4拠点に横串をさす活動をしています。
まとめ
この座談会では、元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>が、材料の特性を向上させるため、実験、計測、計算、産官学、物理、化学、材料が連携して学理を創出してきたことを確認しました。そして今後は、新しい学理をベースにして、これまでにない新材料を創出するフェーズと、学理をさらに追究して確固たる地位を築く両面が必要になると議論いただきました。
さらに、元素戦略プロジェクトを国家戦略として継続的に推進していくためには、学理を追究する論文と同様に、ビジネスの核となる知的資産の取得と活用が不可欠であること。その実現には、アカデミック界が主導して、各省庁やJST、NEDO等のファンディングエイジェンシーと連携した産官学の研究体制を構築する必要があると、熱い議論が交わされました。加えて、企業研究者の学会でのアクティビティー低下が問題提起され、それを補償する仕組みについても検討されました。
第3回を迎える元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>・大型研究施設連携シンポジウムは、今回の開催を機に世界に向けて発信し、次回の第4回目シンポジウムは国際シンポジウムとして海外からも多くの聴講者が来てくれるように発展させたいと考えています。みなさまにもご参加いただき、日本の物質材料科学の明るい未来をどう描いていくのかを議論いたしましょう。
(2017年10月24日 東京で収録)