PD講評 文科省元素戦略プロジェクト13年間のPDを務めて

文部科学省が実施する元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>では、プロジェクトのスムーズな進行のため、文科省と研究機関との調整役としてPD(プログラム・ディレクター)が委嘱されています。
文科省の元素戦略プロジェクトは<産学官連携型>として、平成19年度に始まり3年間で計15課題が採用され、それぞれ5年間の研究開発が行われました。これらのPDも務めましたが、最も苦労した点は、科学研究費補助金の公募研究と異なる、プロジェクトの委託研究での研究契約の概念の理解に、拠点代表をはじめ研究者が時間を要した点です。もう一つは、組織改編によって脱退する企業が出たことでした。
平成24年度に10年間の元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>が設置され、4課題が採択されました。本年度が6年目であり、各課題ともに大きな成果を挙げつつある中、第2回中間評価も行われます。拠点型も研究契約の概念の徹底に苦労しましたが、第1回中間評価以降は国の研究開発プロジェクトのお手本になったと自負しています。村井眞二先生と私のPDで始まった拠点型ですが、今後は玉尾皓平先生がPDを担われます。
拠点型では国の大型研究施設の活用が奨励され、平成26年に第1回連携シンポジウムが開催され、本年は3回目です。ポスターセッションには多くの若手研究者の発表が行われ、交流の良い機会になったと考えています。
私の研究者としての原点は、北大大学院生の頃、東大物性研の実験装置を共同利用させて頂いたことです。物性研はもちろん、全国からこられた研究者からご指導頂くことによって、研究はいかにあるべきかについて考える大きなきっかけになりました。未知の大学や研究機関の研究者と交わることがいかに大切かを痛感しています。本プロジェクトが異分野、異文化をもつ機関の研究者と交わる道場になることを期待しています。

澤岡 昭

元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>PD
大同大学名誉学長